第7回 生物試料分析科学会中国四国支部学術集会

第7回生物試料分析科学会中国四国支部

学術集会 抄録集

日 時:平成24年8月25日(土)12時55分~16時20分

会 場:島根大学医学部 図書館棟3階 視聴覚室

〒693-8501  出雲市塩冶町89-1

TEL 0853-23-2111

集会長:柴田  宏
(島根大学医学部附属病院 検査部)

〒693-8501  出雲市塩冶町89-1

TEL 0853-20-2415  FAX 0853-20-2409

E-mail   lab-hiro@med.shimane-u.ac.jp

集会事務局長:松田 親史

(島根大学医学部附属病院 検査部)

TEL:0853-20-2419

E-mail   matsuda8@med.shimane-u.ac.jp

主 催:生物試料分析科学会中国四国支部

(http:/www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/bsacsb/)

後 援:社団法人 島根県臨床検査技師会

目     次

Ⅰ.会場案内  ………………………………………………………………………………   3

Ⅱ.学術集会案内  …………………………………………………………………………  4

Ⅲ.学術集会概要  …………………………………………………………………………  5

Ⅳ.プログラム  ………………………………………………………………………………   6

Ⅴ.特別講演  生活習慣病の検査データをどう読むか,どう活用するか

島根大学副学長・医学部環境保健医学講座  塩飽 邦憲  …………   9

Ⅵ.一般演題

1.測定の不確かさ評価におけるボトムアップアプローチとトップダウンアプローチ

香川県立保健医療大学           細萱 茂実  …………  11

2.高分子材料による血液凝固活性化への影響

広島国際大学保健医療学部臨床工学科      松原 佑樹,他    ……  11

3. Clostridium perfringens由来フィブロネクチン結合蛋白FbpBの生物活性

岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻   森田 奈緒美,他   ……  12

4. Clostridium perfringens上フィブロネクチンレセプターの認識するフィブロネクチン分子エピトープの決定

岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻   田籠 美華,他   ………  13

5.好中球におけるTNF-αプライミング反応に対するシグナル伝達とfMLP受容体について

香川県立保健医療大学保健医療学部臨床検査学科  太田 安彦,他  … 13

6.好中球活性化に伴うミエロぺルオキシダーゼ放出について

香川県立保健医療大学臨床検査学科        鈴木 章吾,他   ………  14

7. ウェルシュ菌の新規線毛タンパク質遺伝子について

岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻   相谷 佳奈,他   ………  14

8. 細菌同定検査におけるVITEK MSの使用経験

島根大学医学部附属病院検査部            柳楽  槙,他   ………  15

9. 多項目自動血球分析装置XN-9000による髄液細胞数測定の基礎的検討

島根大学医学部附属病院検査部            足立 絵里加,他  ………  15

10. 2型糖尿病患者における血中ヒアルロン酸濃度と血管機能の関連

島根大学医学部附属病院検査部            宇野 誓子,他   ………  16

11. ABO血液型におけるA-weak表現型関連アリールの解析(続報)

愛媛大学大学院病態解析学講座法医学分野  沖浦 達幸,他  ………  16

12. ニューロペプタイドY遺伝子多型と喫煙の関係

島根大学医学部附属病院検査部             松田 親史,他   ……… 17Ⅶ.広告・協賛会社一覧    ……………………………………………………………… 18

Ⅰ. 会 場 案 内

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●交通ご案内●

★JR出雲市駅南口から徒歩25分

★市バス利用

・市民会館、島根医大、上塩冶車庫行にて島根医大病院下車(1番のりば、190円)

・須佐行にて島根医大病院下車(2番のりば)

・市内循環(150円バス)の上塩冶車庫行にて島根医大入口下車徒歩5分(1番のりば)

Ⅱ. 第7回 生物試料分析科学会中国四国支部

学術集会 案内

1.参加受付

午後0時30分から会場前で行います。集会参加費は1,000円です。領収証は参加費と引き換えに受付でお渡しします。

2.演者の方へ

① 講演30分前までに参加受付横のスライド受付にて内容と動作を確認後,受付を済ませてください。

② コンピュータはWindows XPを使用し,プレゼンテーションソフトは Microsoft PowerPoint 2003,2007,2010を使用します。なお,Macintoshの準備はありません。

スライドファイルは集会終了後に責任を持って削除します。

③ 講演時間:講演7分,質疑2分です。座長の指示に従い,時間を厳守してください。

④ 講演抄録を生物試料分析科学会中国四国支部ホームページにリンクさせていただきますことをご了承願います。

3.(社)日本衛生臨床検査技師会 生涯教育点数 「C10点」

参加票名札に学会参加証明が添付されておりますので,自己申告に利用して下さい。

4.駐車場

病院職員用駐車場をご利用下さい。(東門からお入り下さい)

Ⅲ. 第7回 生物試料分析科学会中国四国支部学術集会 概要

時 刻          事    項                         司会および座長

12:30             受付開始                                                           総合司会

12:55    開会の辞  (集会長 柴田  宏)            支部事務長 西向 弘明

支部長挨拶(支部長 宍野 宏治)

13:00    一般演題 (演題番号 1 - 6)        1-2  松原 朱實     3-4 西向 弘明     5-6 川元 博之

13:56    休  憩 (9分間)

14:05    特別講演              司会  柴田  宏



「生活習慣病の検査データをどう読むか,どう活用するか」




島根大学副学長・医学部環境保健医学講座教授  塩飽 邦憲



15:15    休  憩 (5分間)

15:20        一般演題 (演題番号 7 - 12)         7-8  阪田 光彦 9-10 梶川 達志 11-12 糸島 浩一


16:16        閉会の辞 (次期支部長 櫃本 泰雄)



集会関連行事(理事会)

支部理事はご出席ください。

日 時:平成24年8月25日(土)11時30分より

会 場:島根大学医学部図書館1階会議室

世話人:柴田  宏

Ⅳ.プ ロ グ ラ ム


12:30      受付開始

12:55~13:00  開会の辞      集会長 柴田  宏(島根大学医学部附属病院)

支部長挨拶    支部長 宍野 宏治(愛媛大学大学院)

13:00~13:18  一般演題 Ⅰ


講演(演題番号1-2)   座長 松原 朱實 (広島大学病院)

1.測定の不確かさ評価におけるボトムアップアプローチとトップダウンアプローチ

○細萱 茂実               香川県立保健医療大学

2.高分子材料による血液凝固活性化への影響

○松原 佑樹1),吉屋 雅弘1),古賀 一樹1),田淵 嵩人1),中津 えりか2)

矢津 優子3),阪田 光彦1)

1)広島国際大学保健医療学部臨床工学科

2)津みなみクリニック

3)岸和田徳洲会病院

13:19~13:37  一般演題 Ⅱ


講演(演題番号3-4)   座長 西向 弘明 (愛媛大学大学院)

3. Clostridium perfringens由来フィブロネクチン結合蛋白FbpBの生物活性

◯森田 奈緒美1),田籠 美華1),山崎  勤2),片山 誠一2),櫃本 泰雄2)

1)岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻

2)岡山理科大学臨床生命科学科

4. Clostridium perfringens上フィブロネクチンレセプターの認識するフィブロネクチン分子

エピトープの決定

◯田籠 美華1),森田 奈緒美1),山崎  勤2),片山 誠一2),櫃本 泰雄2)

1)岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻

2)岡山理科大学臨床生命科学科

13:38~13:56  一般演題 Ⅲ


講演(演題番号5-6)   座長 川元 博之(下関市立中央病院)

5.好中球におけるTNF-αプライミング反応に対するシグナル伝達とfMLP受容体について

○太田 安彦1),徳永 賢治1),秋山 佳織2),冨野 由里香3),宮脇 圭吾4)

1)香川県立保健医療大学 保健医療学部 臨床検査学科

2)香川県立中央病院検査部,

3)よつばウィメンズクリニック

4)社会医療法人財団大樹会総合病院 回生病院

6.好中球活性化に伴うミエロぺルオキシダーゼ放出について

○鈴木 章吾,北村 久美,太田 安彦,徳永 賢治

香川県立保健医療大学臨床検査学科

13:56~14:05  休  憩

14:05~15:15  特別講演   座長 柴田  宏(島根大学医学部附属病院)



「生活習慣病の検査データをどう読むか,どう活用するか」


島根大学副学長・医学部環境保健医学講座

教授 塩飽 邦憲


15:15~15:20  休  憩

15:20~15:38  一般演題 Ⅳ


講演(演題番号7-8)   座長 阪田 光彦(広島国際大学大学院)

7. ウェルシュ菌の新規線毛タンパク質遺伝子について

◯相谷 佳奈1),渡辺 真理子1),橋川 直也2),成谷 宏文3),櫃本 泰雄2),片山 誠

1)岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻

2)岡山理科大学臨床生命科学科

3)香川大学医学部分子微生物学講座

8. 細菌同定検査におけるVITEK MSの使用経験

◯柳楽  槙,竹内 志津枝,谷口 由紀,森山 英彦,松田 親史,柴田  宏,長井  篤

島根大学医学部附属病院検査部

15:39~15:57  一般演題 Ⅴ


講演(演題番号9-10)  座長 梶川 達志(香川大学病院)

9.多項目自動血球分析装置XN-9000による髄液細胞数測定の基礎的検討

◯足立 絵里加,三島 清司,兒玉 るみ,吉野  功,陶山 多美子,石原 智子,勝部 瑞穂,

柴田  宏,長井  篤

島根大学医学部附属病院検査部

10.2型糖尿病患者における血中ヒアルロン酸濃度と血管機能の関連

◯宇野 誓子1),守田 美和2),矢野 彰三1),石橋  豊3),栗岡 聡一4),柴田  宏1)

杉本 利嗣2)

1)島根大学医学部附属病院検査部

2)島根大学医学部内科学第一

3)島根大学 Vascular Lab

4)小松病院

15:58~16:16  一般演題 Ⅵ


講演(演題番号7-8)   座長 糸島 浩一 (岡山大学病院)

11. ABO血液型におけるA-weak表現型関連アリールの解析(続報)

◯沖浦 達幸1),小野寺 到1),田邉 亮介1),福森 泰雄2),西向 弘明1)

1)愛媛大学大学院病態解析学講座法医学分野

2)近畿ブロック血液センター

12. ニューロペプタイドY遺伝子多型と喫煙の関係

◯松田 親史1),磯村  実2),野津 吉友1),柴田  宏1),並河  徹2),長井  篤 1)

1)島根大学医学部附属病院検査部

2)島根大学医学部病態病理学講座

16:16~16:20  閉会の辞   次期支部長 櫃本 泰雄(岡山理科大学)


特別講演


生活習慣病の検査データをどう読むか,どう活用するか


塩飽 邦憲 島根大学 理事・副学長


はじめに

世界での心血管疾患死亡は1670万人で,全死亡の29%を占めている。特定者に動脈硬化の主要な危険因子である高血圧,高脂血症,肥満,耐糖能異常が集積しやすく,心血管疾患発症が増加することが1920年代より知られていた。米国のReaven (1988)は,これらの動脈硬化危険因子の集積をシンドロームXと名付けた。WHO(1999)は,糖尿病および心血管疾患の予防の観点からこれらの危険因子の重複した状態をメタボリック・シンドロームと名づけ,国際的に統一された疾患名となった。日本でも,メタボリック・シンドロームの診断基準が公表され(2005),腹囲,血圧,中性脂肪,HDLコレステロール,空腹時血糖とそれぞれの治療歴から構成されて簡便な診断基準として活用されている。さらに,高齢化や生活習慣の変容による脂質異常症や糖尿病の増加,世界一の健診好きとして知られる日本人の特性などにより,臨床検査への関心は強まっている。

検査データの測定バイアス

こうした臨床検査への関心の高まりから,検査データの信頼性も注目されつつある。臨床検査データは,検査施設での精度管理の精緻化によって,測定値がより正しい結果に近づいている。しかし,検査データには,測定バイアス(対象者を不正確に測定することによる系統的な誤差)がつきものであり,その最小化に努力が必要である。測定バイアスの中でも,検査機関によって生ずる検査方法による差(LDL-コレステロールなど),被検者の状態に由来する検査データの日内・日差変動(コレステロール値は約10%,中性脂肪値は最大25%変動)が解釈を困難にしている。

時系列的に検査データを読む

私は,これらの問題の一部は,時系列的に検査データを読むことで解決できると考えている。しかし,検査データは,行政,保健医療機関などの分散し,住民のイニシアチブの下で有効活用ができていない現状では困難である。フランス,イギリス,アメリカや香港では健康保険証をICカード化し,健康医療情報の有効活用が図られている。日本では,社会保障・税番号制度が緒に就いたばかりで,健康医療分野での活用にはかなりの時間を要する。そこで,島根県邑南町「おおなん元気ネット」では,健診データを非接触型のフェリカカード(WAONカード)を活用して個人を認証し,住民自らが検査データを活用して健康づくりに役立てるとともに,行政,医療機関,運動施設等が活用するシステムを構築した。このことにより,住民が自らの検査データを時系列的に読むことが可能になり,保健医療スタッフとも情報共有が可能となった。

検査データへの遺伝と環境の影響

個々人で検査データを解釈する上でさらに問題となるのが,特定の病態をどの検査データまたはその組み合わせ(体重増加の影響は個々人によって異なる)がどの程度の確率で示すことができるかという問題である。特に,検査データへの遺伝と環境の影響がどの程度であるかは,治療や予防のあり方に大きく影響する。生活習慣病に関連する検査データでは,一般に環境は遺伝の影響よりも大きく,生活習慣変容によって改善可能な場合が多い。

人口寄与リスク

検査データの疾病予知能力は,コホート研究によって得られた相対危険度で示される場合が多い。しかし,いくか相対危険度が高くても対象となる人口が少なければ,予防・治療対策としての費用対効果は低い。このため,人口要素を加味した人口寄与リスクが考慮される必要がある。

一般演題


1.測定の不確かさ評価におけるボトムアップアプローチとトップダウンアプローチ


◯細萱 茂実

香川県立保健医療大学

【目的】“不確かさの表現のガイド(GUM)”は,測定プロセスのモデルが利用できる場合に適用するボトムアップアプローチである。その後,共同実験で得られる測定法のパフォーマンスの推定値を用いるトップダウンアプローチ(ISO/TS21748)が発行された。これら不確かさ評価法を比較し,JCCLS登録の専用計算ソフトの妥当性を評価した。

【方法】“ISO/TS21748 測定の不確かさ-第1部:測定の不確かさの評価における併行精度、再現精度及び真度の推定値の利用の指針”は,GUMの原則に完全に適合しており,すべての測定及び試験の分野に適用可能である。その手順と計算ソフトとを比較した。

【結果】JCCLS登録の不確かさ評価法は,併行精度と室内中間精度または再現精度の推定値を用いた測定に伴うタイプA評価が主要部であり,ISO/TS21748で規定する手順に概ね対応していた。本法はISO/TS21748が発行される以前に提示したものであるが,基本的内容が適合することを確認した。

【考察】測定結果の不確かさは,信頼性の程度を客観的に表す指標であり,ISO/TC212の中で臨床検査向け国際規格の早い発行が望まれる。

2.高分子材料による血液凝固活性化への影響


○松原 佑樹1),吉屋 雅弘1),古賀 一樹1),田淵 嵩人1),中津 えりか2),矢津 優子3),阪田 光彦1)

1広島国際大学保健医療学部臨床工学科,2)津みなみクリニック,3)岸和田徳洲会病院

【はじめに】様々な高分子材料が臨床の現場で使用されている。血液回路では残血、血漿板減少、抗凝固剤の選択など血液凝固の問題が報告されており、接触する生体材料の種類により、血小板、補体等の活性化、特に接着タンパク質と血小板との相互作用によって回路内血液凝固が生じると考えられている。今回、各種高分子材料による血液凝固の活性化を測定し、血液と異物との接触による血液凝固活性化、凝固活性タンパク質の材料への吸着、材料へ吸着したタンパク質による凝固因子の活性化の影響を調べた。血液凝固の活性化は全血凝固時間で、材料への吸着トロンビン様物質量は合成基質S-2238にてトロンビン様活性として測定した。実験に使用した材料は、ガラス類(ガラス(G)、シリコーン化ガラス(SG))と高分子類(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS))である。

【結果】吸着トロンビン様活性[pkat/ml]は、順に53.4(G)>14.8(SG)>2.1(PFA)>1.0(PMP)>0.7(PP)>0.7(PS)となった。全血凝固時間(sec)は2385(PS)>2318(PP)>1883(PMP)>1620(PFA)>713(SG)>548(G)となった。また全血凝固時間とトロンビン様活性の相関関係は㏒㏒ =0.98と良好であった。

【まとめ】凝固時間が短い材質ほど吸着トロンビン様活性が多い事がわかった。血液が異物である回路やダイアライザーと接触することでトロンビン様物質が吸着し、さらなる血液凝固活性化が生じることが示唆された。また、血小板数とトロンビン様物質量に相関関係は見られなかった。

3Clostridium perfringens由来フィブロネクチン結合タンパクFbpBの生物活性


○森田 奈緒美1),田籠 美華1),山崎 勤2),片山 誠一2),櫃本 泰雄2)

1)岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻,2)岡山理科大学臨床生命科学科

【目的】フィブロネクチン(Fn)は,ヒトの血漿中や結合組織中に存在するマトリクスタンパクである。我々はClostridium perfringens (CP)が産生する2種類のFn結合タンパク,FbpAおよびFbpBを明らかにし,その性質について調べてきた。今回,特にFbpBの生物活性について新たな知見を得たので報告する。

【方法】FbpAおよびFbpBの発現を欠失させた菌株を用いた。His-tagを付加した遺伝子組換えrIII1-C (ヒトFn断片),rFbpAおよびrFbpBは,形質転換した大腸菌溶菌上清からニッケルカラムにより精製して用いた。菌体とタンパクの結合実験は,EIAプレートにCPを乾燥固定し,各種タンパクを反応させて結合を調べた。

【結果と考察】rFbpAおよびrFbpBは,いずれもプレート上に吸着させたCPに結合することが示された。また,CPにあらかじめ rFbpBを結合させることにより,CPに対するrIII1-Cの結合量が増加した。以前我々は,rFbpAおよびrFbpBがrIII1-Cに特異的に結合することを示した。本研究結果は,FbpBがCPに結合すると,CPがより強くrIII1-Cに結合するようになることを示唆している。

般演題


4.Clostridium perfringens上フィブロネクチンレセプターの認識するフィブロネクチン分子エピトープの決定


○田籠 美華1),森田 奈緒美1),山崎 勤2),片山 誠一2),櫃本 泰雄2)

1)岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻,2)岡山理科大学臨床生命科学科

【目的】我々は今回,Clostridium perfringens(CP)に対するフィブロネクチン(Fn)の結合を抗Fnモノクローナル抗体(HB39)が阻害することを見出した。これは,CP上のFnレセプターが,Fn分子のどの部分を認識しているかを知る手がかりになりうると考えた。そこで本研究では,HB39の認識エピトープの決定を目的とした。

【方法】各種抗Fnモノクローナル抗体(mAb)は,ハイブリドーマ上清からProtein Gカラムにより精製した。His-tag付加各種遺伝子組換えヒトFn断片は,それぞれ対応する遺伝子を大腸菌に組み込み,その溶菌上清からニッケルカラムで精製した。Fn,遺伝子組換え各種Fn断片,各種mAbをマイクロプレート上で反応させ,ELISAにより測定した。

【結果と考察】CPに対するFnの結合をHB39が阻害した。また,Fnのtype lllモジュールの一つであるrlll9は,Fnに対するHB39の結合を阻害した。これらのことからC.perfringensとFnの結合にはFn分子中lll9の部位そのもの,あるいはその近傍が関与している可能性が示された。

5.好中球におけるTNF-αプライミング反応に対するシグナル伝達とfMLP受容体について


○太田 安彦1),徳永 賢治1),秋山 佳織2),冨野 由里香3),宮脇 圭吾4)

1)香川県立保健医療大学 保健医療学部 臨床検査学科

2)香川県立中央病院検査部,

3)よつばウィメンズクリニック

4)社会医療法人財団大樹会総合病院 回生病院)

【目的】好中球はサイトカインの作用によりプライミングされた状態になり,続いて異なる刺激因子の作用を受けると活性酸素の産生が亢進する。しかしながら,その詳細な機序は明らかになっていない。今回,NADPH酸化酵素の活性化に対する各種刺激物質によるシグナル伝達とfMLP受容体の発現について検討した。

【方法】TNF-αによるプライミング反応に対する刺激物質,阻害剤による活性酸素産生,リン酸化タンパクの検出を行った。さらに,fMLP受容体の発現をフローサイトメーターで測定した。

【結果・考察】TNF-αのプライミングはPKCチロシンキナーゼ阻害剤でO2産生とシグナル伝達のタンパクのリン酸化が抑制された。一方,fMLP受容体の発現に対する影響は認めなかった。これらの結果は,プライミング反応はシグナル伝達を増強し,NADPH酸化酵素を活性化することが示唆された。

一般演題


6.好中球活性化に伴うミエロぺルオキシダーゼ放出について


○鈴木 章吾,北村 久美,太田 安彦,徳永 賢治

香川県立保健医療大学臨床検査学科

【目的】好中球は各種病原体による感染に対して防御反応としての機能を有し,活性化に伴い,各種活性酸素を産生し強力な殺菌作用を示す。ミエロぺルオキシダーゼ(MPO)はその過程で重要な役割を果たす。今回,MPOの放出反応について検討した。

【方法】ヘパリン採血後,モノポリ分離剤で好中球を分離し試料とした。好中球の活性化はTNF-αでプライミング後にPMA,fMLPで刺激して細胞外に放出するMPOを測定した。また刺激による細胞膜へのMPOの表出をフローサイトメーターで測定した。

【結果・考察】好中球はPMA,fMLP刺激による細胞外にMPOの放出が認められた。さらに細胞膜へのMPO表出はPMA刺激により増加した。

7.ウェルシュ菌の新規線毛タンパク質遺伝子について


○相谷 佳奈1), 渡辺 真理子1), 橋川 直也2), 成谷 宏文3), 櫃本 泰雄2), 片山 誠一2)

1)岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻,2)岡山理科大学臨床生命科学科

3)香川大学医学部分子微生物学講座

【目的】ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)はガス壊疽や食中毒などを引き起こす病原細菌である。この細菌の菌体表層タンパク質(57 kDa)遺伝子(CPE0156)について解析を進めたところ,新たに線毛が存在する可能性が示唆されたので報告する。

【方法】ウェルシュ菌HN13株(strain 13 DgalK DgalT)からtotal RNAを調製し,RT-PCR法を用いてCPE0156遺伝子の発現を調べた。 CPE0156遺伝子を欠失した変異株は,In-frame deletion法を用いて作成した。

【結果と考察】RT-PCR法によりウェルシュ菌HN13株において,CPE0156遺伝子が発現していることを確かめた。次に抗rCPE0156抗体を用いてHN13株の菌体表面タンパク質をウェスタンブロットしたところ,105 kDa以上のCPE0156タンパク質重合体の形成が認められた。 DCPE0156株では,重合体は消失し,CPE0156遺伝子を補うと再び現れた。以上のことから,CPE0156遺伝子は,線毛構成タンパク質をコードしていることが示唆された。

一般演題


8.細菌同定検査におけるVITEK MSの使用経験


○柳楽 槙,竹内 志津枝,谷口 由紀,松田 親史,森山 英彦,柴田 宏,長井 篤

島根大学医学部附属病院検査部

【はじめに】細菌同定を目的とした質量分析装置としてVITEK MS(シスメックス・ビオメリュー)が医療機器として認可された。今回,日常検査への導入を目的としてVITEK MSにおける再現性を検証し,従来法との比較を行ったので報告する。

【対象と方法】ATCC株4菌種を用いて10回同時測定を行った。また,2012年6月に当検査室で臨床検体から分離された207株(うちCandida属15株)を対象とし,VITEK MSの結果と従来法での同定菌名との比較を行った。従来法は,VITEK2同定カード,コアグラーゼ試験・鑑別培地等用手法を適宜使用した。

【結果】ATCC株の測定は,10回すべて同一の菌名となり良好な再現性であった。従来法と菌種名が一致したのは207株中182株(87.9%)であった。属名までの一致は195株(94.2%)であった。

【まとめ】VITEK MSを用いた同定は,再現性良好であり,従来法との一致率も良好であった。菌を塗布してから分析完了まで1時間以内であり,同定結果報告までの時間短縮が期待でき,特に血液培養陽性など重症例における迅速報告に貢献できると考える。

9.多項目自動血球分析装置XN-9000による髄液細胞数測定の基礎的検討


○足立 絵里加,三島 清司,兒玉 るみ,吉野 功,陶山 多美子,

石原 智子,勝部 瑞穂,柴田 宏,長井 篤

島根大学医学部付属病院中央検査部

【はじめに】多項目自動血球分析装置XN-9000(XN)は,髄液細胞数測定,分類の自動測定が可能である。XNを用いた髄液細胞数測定の基礎的検討を行った。

【対象】髄液検体105件

【方法】①目視法との相関:目視法とXNで測定した細胞数,細胞分画(単核球数,多核球数)について相関性を調べた。②同時再現性:細胞数が異なる3検体をそれぞれ6回連続測定し再現性を調べた。③経時変化:髄液を提出直後,1,2,3,12,24時間後に測定した。

【結果】細胞数・細胞分画においてXNと目視法では良好な相関が得られた(細胞数y=0.903x+4.086,r= 0.960,単核球数y=1.080+0.155,r= 0.963,多核球数y=0.617x+1.902,r= 0.955)。同時再現性は細胞数平均39.2/μlでCV 5.5%,10.0/μlでCV 12.6%,1.5/μlでCV 36.5%であった。また,経時的細胞数の変化は,提出1時間後から認められた。

【考察】XNは前処理を必要とせず,細胞数・細胞分画を自動測定できることから,髄液細胞数・分類測定の迅速化及び測定者間差の是正に有用と考える。

一般演題


10.2型糖尿病患者における血中ヒアルロン酸濃度と血管機能の関連


○宇野 誓子1),守田 美和2),矢野 彰三1),石橋 豊3),栗岡 聡一4),柴田 宏1),杉本 利嗣2)

1)島根大学医学部附属病院検査部,2)島根大学医学部内科学第一,

3)島根大学Vascular Lab,4)小松病院

【背景】糖尿病患者は血中ヒアルロン酸(HA)が高値であり,動脈硬化の血管障害修復過程においてHA産生が亢進する事,さらにHAには血管平滑筋増殖促進作用がある事が報告されている。しかし,HAと血管機能の関連は明らかではない。

【目的】HAと血管機能との関連を検討する。

【対象と方法】2型糖尿病患者79名(年齢62 ± 13歳)を対象に,内皮依存性血管拡張反応(FMD)と内皮非依存性血管拡張反応(NMD)の測定を行いHAとの関連をした。

【結果】平均FMD:4.4 ± 3.0%,NMD:13.3 ± 6.4%。各種臨床パラメ-タを独立変数とし,FMDを従属変数とした重回帰分析では年齢(標準偏回帰係数 = -3.99,p = 0.002)と糖尿病罹病期間(標準偏回帰係数 = -0.276,p = 0.027)が選択された。NMDを従属変数とした重回帰分析ではHA(標準偏回帰係数 = -0.401,p = 0.003)のみが選択された。

【結語】HAが血管平滑筋機能マーカーとなる可能性が示唆された。

11.ABO血液型におけるA-weak表現型関連アリールの解析(続報)


○沖浦 達幸1),小野寺 到1),田邉 亮介 1),福森 泰雄2),西向 弘明1)

1)愛媛大学大学院病態解析学講座法医学分野,2)近畿ブロック血液センター

【目的】ABO血液型にはA101,A102,B101,O01およびO02の,5種類の主要なアリールがあるが,近年は稀な変異表現型に関連するアリールが明らかにされてきている。前回,我々は日本人から検出したA-weak表現型(Aweak:A抗原量が非常に低いタイプ)に関連する15種類のアリールを明らかにした。その後,新たにAweakの一種であるAel系アリールを見出したので,今回はこのアリールの解析結果およびこれらAweak関連アリールの発生過程(推定)について報告する。

【方法】新たなAweak関連アリール検出法は前回と同様で,ABO遺伝子のエクソン6および7の塩基を,PCRダイレクト・シークェンシングにより解析した。

【結果とまとめ】 新たに検出したDNA塩基配列は,エクソン7ではnt646-nt681-nt771-nt829にAel-3と同様の変異が見られ,さらにエクソン6にnt297A>Gの変異が見られた。従ってこれまでのAel-3をAel-3.1に改め,今回の新アリールをAel-3.2にした。Aweak関連アリールの発生過程については,Ael系以外の12種類のアリールはA101またはA102のエクソン7に1塩基の変異が生じたものと,そして4種類のAel系アリールはO02とA101,A102,またはB101との交差により生じたと考えられた。

一般演題


12.ニューロペプタイドY遺伝子多型と喫煙の関係


○松田 親史1),磯村 実2),野津 吉友1),柴田 宏1),並河 徹2),長井 篤1)

1)島根大学医学部附属病院検査部,2)島根大学医学部病態病理学講座

【目的】ニューロペプタイドY(以下NPY)は,摂食行動や情動,学習,記憶などに重要な役割を果たしている36個のアミノ酸からなる短鎖ペプチドである。近年,NPY遺伝子多型(rs16147)の差が喫煙行動に影響することが報告された。本研究は,本邦の傾向を調査することを目的とする。

【対象と方法】島根大学疾病予知予防研究拠点で実施している住民健診受診者2,980名を対象とした。NPY遺伝子多型(rs16147)の測定はTaqMan法を用いて解析した。NPY遺伝子多型(rs16147)と喫煙の関係を,統計解析ソフトSPSS statistics Ver.17.0を用いて解析した。

【結果】TaqMan法を用いて解析したNPY遺伝子多型(rs16147)のアレル頻度はCC:41.1%,CT:44.5%,TT:14.4%であり,この結果はハーディーワインバーグ平衡に合致している結果であった。喫煙群,非喫煙群の各genotype(CC,CT,TT)についてχ2検定を行ったところ,有意差は認められなかった(p:0.095)。

【考察】今回の調査では,NPY遺伝子多型(rs16147)と喫煙との間には既報のような有意な関係を認めなかった。結果の相違の要因として,母集団の地域性など交絡因子の存在が考えられた。

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(五十音順)

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生物試料分析科学会中国四国支部理事名簿

支 部 長  宍野 宏治  (愛媛大学大学院医学系研究科)

事 務 長  西向 弘明  (愛媛大学大学院医学系研究科)

会  計  松原 朱實  (広島大学病院)

理  事  柴田  宏  (島根大学医学部附属病院)

理  事  徳永 賢治  (香川県立保健医療大学)

理  事  櫃本 泰雄  (岡山理科大学)

理  事  中尾 隆之  (徳島大学病院)

理  事  古川 雅規  (岡山大学病院)

理  事  高夫 智子  (済生会広島病院)

理  事  細萱 茂実  (香川県立保健医療大学)

理  事  沖浦 達幸  (愛媛大学大学院医学系研究科)

理  事  梶川 達志  (香川大学医学部附属病院)

理  事  阪田 光彦  (広島国際大学大学院)

理  事  糸島 浩一  (岡山大学病院)

理  事  川元 博之  (下関市立中央病院)

(順不同,敬称略)

第7回生物試料分析科学会

中国四国支部学術集会抄録集


2012年8月20日発行

発 行 人:生物試料分析科学会中国四国支部

編 集 人:集会長    柴田  宏

集会事務局長 松田 親史

支部事務局:愛媛大学大学院医学系研究科

病態解析学講座法医学分野内

支部長 宍野 宏治

事務長 西向 弘明

〒791-0295 愛媛県東温市志津川

TEL 089-960-5291(直通)

FAX 089-960-5293(直通)

E-mail abs-ehm@m.ehime-u.ac.jp

印   刷:不二印刷

TEL 089-973-1266