第2回 生物試料分析科学会 中国四国支部会

松山城 東京第一ホテル松山より

松山城 東京第一ホテル松山より

第2回 生物試料分析科学会 中国四国支部会
抄 録 集

日時:平成19年8月11日(土) 13時55分~17時00分
会場:東京第一ホテル松山 〒790-0006 松山市南堀端町6-16
TEL 089-947-4411, FAX 089-947-4420

学会長:西向 弘明
(愛媛大学大学院医学系研究科病態解析学講座法医学分野内)
〒791-0295 愛媛県東温市志津川
TEL 089-960-5291, FAX 089-960-5293
E-mail abs2cs@m.ehime-u.ac.jp

主催:生物試料分析科学会中国四国支部
(http:/www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/bsacsb/)
後援:社団法人 愛媛県臨床衛生検査技師会
社団法人 岡山県臨床衛生検査技師会

目次

特別講演
座長 宍野宏治(愛媛大学医学部附属病院)
「当直時、異常な検査結果を報告できますか?」
北里大学大学院医療系研究科准教授 小川 善資

一般演題(1-4)
座長 西向弘明(愛媛大学大学院医学系研究科)
座長 徳永賢治(香川県立医療技術大学)
1.ウェルシュ菌表層のフィブロネクチン結合タンパクのプロテアーゼによる分離同定
岡山理科大学大学院・理・生物化学,岡山理科大学・理・臨床生命科学
○渡邉 瞳,他
2.ウェルシュ菌が有する2種類のフィブロネクチン結合タンパクの解析
岡山理科大学大学院・理・生物化学,岡山理科大学・理・臨床生命科学
○廣田 真翼,他
3.爪におけるX染色体不活性化パターン?まだら模様,それとも無地?
愛媛県立医療技術大学 臨床検査学科,愛媛大学大学院医学系研究科 病態解析学講座法医学分野
○岡田 眞理子,他
4.BMTおよびCBSCT施行後の法医学的個人識別法による生着判定
Ⅱ.キメリズム解析
愛媛大学大学院医学系研究科 病態解析学講座法医学分野
○沖浦 達幸,他

一般演題(5-8)
座長 櫃本泰雄(岡山理科大学)
座長  高夫智子(済生会広島病院)
5.採血実習用血管位置検出機器の試作
愛媛県立医療技術大学
○佐伯 ゆかり,他
6.プロポリスおよび成分の抗酸化作用の比較・評価
香川県立保健医療大学臨床検査学科
○萬城 智佳,他
7.徳島県におけるP/S比調整試料を用いたAMYサーベイの試み
徳島大学医学部・歯学部附属病院 診療支援部
○中尾 隆之,他
8.多型性LDL血症とRemL-C値との関連性について
国立大学法人 愛媛大学医学部附属病院 診療支援部
○宍野 宏治,他

話題提供(1-2)
座長 松原朱實(広島大学医学部附属病院)
1.尿中ジアセチルスペルミンの測定法および産生機構
岡ヤマサ醤油株式会社 診断薬部診断薬基礎開発室
○濱沖 勝
2.イヌリンクリアランス測定法について
東洋紡績株式会社,株式会社富士薬品
○木全 伸介,他

学会印象記
松原朱實(広島大学医学部附属病院)、高夫智子(済生会広島病院)、中尾隆之(徳島大学医学部附属病院)

特別講演

当直時,異常な検査結果を報告できますか?

北里大学大学院医療系研究科  小川 善資

松山城から見た松山市内城下 右手前の高いビルが学会場の第一ホテル

松山城から見た松山市内城下 右手前の高いビルが学会場の第一ホテル

日・当直時に,異常データ(パニックバリュ)が測定された場合,あなたはどの様に対処されていますか。日常検査では先輩諸氏や上司が回りにおられ,困難な問題や異常データが測定された時に,適切なアドバイスをいただけることでしょう。しかし,日・当直時には頼りになる先輩も,上司もいません。仕方なくもう一度測定し直しますよね。でも,99%程度の確率で同じ測定値が出て来ると思います。ならば,3回測定しますか? いや4回測定しますか? それとも,気付かなかった振りをしてデータを返します? いいえ,「検査依頼した医師に連絡して,データを返却します。」これは一応の正解でしょうね。でもそれだけで良いのでしょうか。医師から,「検査結果に誤りはありませんでしょうか?」と聞かれた場合,自信を持って,「大丈夫です。」と答えることができるでしょうか。自信の根拠は何ですか。強気ですか? 患者さんのことを考えると,「大丈夫です」の根拠は学問的,論理的でなければならないと思います。例えば,「この検査の結果とこの検査の結果から,患者さんはこの様な状態にあると,考えることができます。従って,今回の検査結果がこの様に高値になっているものと思われます。」と言いたくはありませんか。また,医師から「検査結果から,次ぎにすべき検査は何がよいでしょう?」と聞かれた場合,明確に検査項目を挙げる知識があれば,自信を持って検査結果を返せるのではないでしょうか。病棟検査技師,検査技師を含めたチーム医療が始まりつつあります。この様な能力がなければチーム医療について行けないのではないでしょうか。幸いなことに,臨床検査で扱う病気は余り多くはありません。皆さんで病気の勉強,病気と検査の関わり合いについて勉強してみませんか。なるべく実例を挙げ,易しいところから皆さんと一緒に考えてみませんか。

一般演題

1.ウェルシュ菌表層のフィブロネクチン結合タンパクのプロテアーゼによる分離同定

1岡山理科大学大学院・理・生物化学,2岡山理科大学・理・臨床生命科学
○渡邊 瞳1,奥田 匡哉1,山崎 勤1,片山 誠一2,櫃本 泰雄2

【目的】 ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は,ヒトにガス壊疽と食中毒を引き起こす偏性嫌気性グラム陽性細菌である。我々は以前,ウェルシュ菌がヒトのフィブロネクチン(Fn)を結合することを示した。これまで,その菌体細胞壁からのFn結合タンパク(Fibronectin-binding protein:Fbp)の分離精製を試みたが,タンパク分子の特定には至らなかった。そこで,今回新たに,菌体表面を酵素処理することによりタンパクを抽出し,Fn結合能を持つペプチドの分離同定を試みた。
【方法】 ガス壊疽から分離されたClostridium perfringens type A strain 13の対数増殖期の菌体を,trypsin(0.1 mg/ml、10 min、37 ℃)あるいはchymotrypsin(0.1 mg/ml,10 min,37 ℃)により処理した。その上清を濃縮し電気泳動を行い,ligand blottingによりFn結合能を調べた。
【結果】 菌体表面のtrypsin消化物からは,分子量28 KDa・33.5 KDa,chymotrypsin消化物からは,分子量17.5 KDa・23 KDa・28 KDa・33.5 KDaのFn結合ペプチド断片が得られた。これらそれぞれのペプチド断片のアミノ酸配列を,今後決定していく予定である。

2.ウェルシュ菌が有する2種類のフィブロネクチン結合タンパクの解析

1岡山理科大学大学院・理・生物化学,  2岡山理科大学・理・臨床生命科学
○廣田 真翼1,奥田 匡哉1,山崎 勤1,片山 誠一2,櫃本 泰雄2

【目的】 ウェルシュ菌(Clostridum perfingens)は,ヒトのフィブロネクチン(Fn)を結合する。一方,ウェルシュ菌は,Fnを結合すると考えられるタンパク(fibronectin-binding protein; Fbp)をコードする2種類の遺伝子(CPE1847, CPE0737)を持つ(清水ら,2002)。本研究では,これらの遺伝子をクローニングして得た組換えタンパク,rFbp66,rFbp25が,それぞれFnに結合するかどうかを調べた。また、Fbp66,Fbp25に対するポリクローナル抗体を作製し,これらの分子がウェルシュ菌菌体上に表出されているのか,あるいは,分泌されているのか否かを調べた。
【方法】 ウェルシュ菌13株のゲノムからCPE1847とCPE0737の両遺伝子をPCRクローニングし,それぞれ(His )10タグを付加した後,大腸菌で大量発現させた。精製した組換えタンパク(rFbp66, rFbp25)とFnの結合は,ビオチン標識化したヒト血清由来Fnを用いて, ELISA,リガンドブロット法により調べた。rFbp66およびrFbp25をマウスにFCAとともに免疫し,ポリクローナル抗体を得た。乾燥固定したウェルシュ菌に対する抗rFbp66,抗rFbp25抗体の結合を,ELISA法により測定した。また,対数増殖期のウェルシュ菌をAlpha-MOD培地で培養し,その上清を濃縮後,SDS-PAGEして Western blottingによりFbp66及びFbp25の有無を調べた。
【結果と考察】 rFbp66とrFbp25は,Fnに特異的に結合する。rFbp66のFn結合力はrFbp25のそれより高かった。抗rFbp66及び抗rFbp25抗体は,ウェルシュ菌表面上に痕跡程度結合した。以上のことより,Fbp66とFbp25タンパクは,菌上にはほとんど表出されていないか,もしくはたとえ表出されているとしても,極めて少ない量しか表出されていないと考えられた。また,培養上清中にはFbp66及びFbp25に相当するタンパクは見い出されなかった。

3.爪におけるX染色体不活性化パターン?まだら模様,それとも無地?

1愛媛県立医療技術大学 臨床検査学科,2愛媛大学大学院医学系研究科 病態解析学講座法医学分野
○岡田 眞理子1,西向 弘明2,沖浦 達幸2

【背景と目的】 すべての哺乳動物の雌の体細胞は,2本のX染色体のうちどちらか一方が不活性化されている。三毛猫の毛皮のパターンはX染色体不活性化によるものであることはよく知られているが,ヒトの皮膚でも特有なX染色体不活性化パターンがあるのだろうか。今回はヒト皮膚X染色体不活性化パターンについて,爪を材料に用いて調べた。
【方法】 爪は限局された部位で発生する皮膚付属器官のひとつで,サンプルを得ることが容易な皮膚材料である。私達は,X染色体上のhuman androgen receptor gene (HUMARA) がヘテロ接合体であることが既知の健常ボランティア女性から,個々の指爪の提供をうけ,それぞれ別々にDNAを抽出し,HUMARA法を用いてX染色体不活性化パターンを調べた。
【結果と考察】 手指,足指とも爪のX染色体不活性化パターンは一定ではなく,1人の個体の中で,両方のX染色体がともに発現している爪と,どちらか一方しか発現していない爪が存在していた。つまり,ヒト女性の爪は,X染色体発現について,指によってまだら模様であったり,無地であったりすることが明らかとなった。

4.BMTおよびCBSCT施行後の法医学的個人識別法による生着判定
Ⅱ.キメリズム解析

愛媛大学大学院医学系研究科 病態解析学講座法医学分野
○沖浦 達幸,辻村 隆介,西向 弘明

【はじめに】 我々は昨年の本例会で,同種骨髄幹細胞移植(BMT)や臍帯血幹細胞移植(CBSCT)を施行した後のドナー造血幹細胞生着判定について,法医学的DNA型個人識別法の有用性を報告した。今回は同法によるキメリズム解析について検討したので報告する。
【結果と考察】 ドナーと患者を想定した2名のDNA試料を混合し,ドナー細胞が10%, 30%,50%,70%および90%の混合試料を作製した。それぞれの試料をキャピラリー電気泳動法により10ローカスのDNA型を検査した。今回の2名の試料を使用した場合,キメリズム解析に有効なローカスは4種類であった。各ローカスにおいて,アリールのピーク解析値からベースラインを補正した値をもとに,混合試料におけるドナー細胞率を計算すると,10%混合試料で10.5?16.0%,同30%では25.8?33.3%,同50%では44.5?56.5%,同70%では53.4?74.2%,同90%では84.0?94.5%であった。次に4種類のローカスにおけるドナー細胞率の平均は,10%混合試料では12.4%,同30%では29.2%,同50%では51.1%,同70%では66.4%,同90%では88.7%と計算され,本法はキメリズム解析に使用することもほぼ可能であると思われた。

5.採血実習用血管位置検出機器の試作

愛媛県立医療技術大学
○佐伯 ゆかり,中上 奈々恵,佐川 輝高

【目的】 採血実習が解剖学的実感を持って体験できるように安価な血管位置検出機器の作製を試みた。
【方法】 (1)黄色,赤色高輝度LEDを用いた血管位置検出機器と(2)近赤外線LEDを用いた機器の製作を行った。血管検出評価はデジタルカメラ撮影画像をグレースケールに変換後,RGBの和を求め指標とした。
【結果】 (1)可視光利用機器:極めて浅い血管は黄色LED,採血に選択可能な静脈は赤色LEDで検出が可能であった。また,市販のものに比べLED数を増やし,状況により点灯数を増減することでより多くの腕に対応できるようになった。(2)近赤外線利用機器:市販のデジタルカメラ等の赤外線カットフィルターを除去改造しディテクターとして用いた。可視光共存下では可視光カットフィルター装着が必要であったが,暗所・装着無し撮影の方がより良い像が得られた。電源の廃材利用などによりいずれの機器も千円以内での製作が可能であった。
【考察】 採血部周辺広範囲の血管検出を近赤外線装置で行い,局所の血管走向観察を可視光装置で行うことで,非侵襲的に血管走向が観察出来た。解剖学的知識を加味することで大きな神経や動脈の走向などをイメージすることが出来た。

6.プロポリスおよび成分の抗酸化作用の比較・評価

香川県立保健医療大学臨床検査学科
○萬城 智佳,梅田 愛美,太田 安彦,徳永 賢治

【目的】 生体内の代謝過程では,常に副産物として活性酸素と呼ばれる酸素ラジカルの生成を伴い,これらは種々の疾病や老化などの原因になる。近年,そのようなラジカルを消去する食品の研究や開発が盛んである。しかし,プロポリス成分についての研究は少ない。今回は,プロポリスとその含有成分の抗酸化能を測定し,さらに,代表的な抗酸化物質であるαトコフェロールと比較した。
【方法】 試料(プロポリス,カフェー酸フェネチルエステル,アルテピリンC,ガランギン,p?クマル酸,α?トコフェロール)について(1)スーパーオキサイド(O2?)消去活性,(2)DPPHラジカル消去活性を調べ,比較することで抗酸化能を評価した。
【結果・考察】 プロポリスおよび各成分は抗酸化作用を示した。その効果は作用するラジカルによって多少の差はあるが,相関が認められた。O2?消去能,DPPHラジカル消去能,ともに最も強いのはプロポリス成分の中でカフェー酸フェネチルエステルであった。

7.徳島県におけるP/S比調整試料を用いたAMYサーベイの試み

徳島大学医学部・歯学部附属病院 診療支援部
○中尾 隆之,永峰 康孝

【はじめに】 徳島県臨床検査技師会施設間差是正委員会では, 日本臨床化学会(JSCC)において,AMY測定勧告法が発表されたことに伴い,膵型および唾液腺型の比率(P/S比)による各種試薬の反応特異性を把握するために,P/S比の異なる試料を用いたサーベイを実施した。また、本サーベイにて用いた試料をJSCC- SOPにて測定し,サーベイ集計結果から得られたP/S比による各種試薬の反応特異性との比較を行った。
【サーベイ集計結果および考察】 集計結果は,P-AMY優位高濃度域試料では,G7試薬を用いる施設(G7群)がG5およびG2試薬を用いている施設(G5G2群)よりも10%の低値傾向を示した。S-AMY優位高濃度域試料では,逆にG7群がG5G2群より7%高値傾向を示した。また,JSCC- SOPにて測定した結果は,G7群における集計結果とほぼ一致するものであった。このことにより,bJSCC-SOPでの測定におけるP/S比特性は,同基質を用いる試薬(G7)とは一致し,その他の基質を用いた試薬とは異なることが確認された。サーベイ結果より,試料のP/S比によって,用いる試薬の違いに起因する施設間差が生じていることが明らかになった。P/S比が1(1:1)である高濃度域試料を作製してサーベイに用いた結果,両群の差異は認められず,サーベイ用試料としてP/S比を1に調整することの有用性が示唆された。

8.多型性LDL血症とRemL-C値との関連性について

国立大学法人 愛媛大学医学部附属病院 診療支援部
○宍野 宏治,岡本 康二,菅野 和久,越智 正昭,村瀬 光春

【目的】 型性LDL血症と自動分析装置で測定が可能なレムナント様リポ蛋白コレステロール(RemL-C)との関連性について調べた。
【対象および方法】 RemL-Cの参考基準値の設定には臨床検査所見に異常のない健常者の血清を使用した。対象群は当院の外来および入院加療中の脂質異常患者および正脂血症患者とした。RemL-Cの測定にはメタボリードRemL-C(協和メデツクス)をTBA200FRへの適用させて測定した。多型性LDL血症の判別にはポリアクリルアミドゲル(PAGE)を用いたリポ蛋白電気泳動法を使用した。
【結果および考察】 脂質異常をWHO分類にしたがって分けて比較した。脂質異常群の2a型および2b型のRemL-C値は健常者および正脂血症群よりも有意に高値を示した。また、多型性LDL血症群との関連性については,Nodular型およびDisrupted型においてRemL-C値はSymmetry群よりも有意に高値を示した。したがって,RemL-C値はレムナントリポ蛋白を反映するのみならず,LDLの小型化をも示すマーカーとなりうることが示唆された。
【結論】 本法は多型性LDL血症などの脂質異常の管理項目として,また動脈硬化関連項目としての有用な測定項目と考えられた。

話題提供

1.尿中ジアセチルスペルミンの測定法および産生機構

ヤマサ醤油株式会社 診断薬部診断薬基礎開発室
○濱沖 勝

【目的】 尿中ジアセチルスペルミンは癌マーカーとして報告されているが, HPLCあるいはポリクローナル抗体を用いた免疫測定法であったのでモノクローナル抗体による測定法の開発を目指した。また, その産生機構について検討した。
【方法】 モノクローナル抗体の作製は通常の方法によった。アッセイ系は抗体固相,? HRP標識アセチルスペルミンを用いたプレート競合法とした。また, マウスを用いて産生機構を検討した。
【結果】 アッセイ系は測定範囲1?64nM, 同時再現性3%, 日差再現性7%であった。基準値(nmol/g Creatinine, SD)は男性105 32, 女性139 41であった。また, 産生はマクロファージが行っており, グルコースの枯渇が大きな誘導因子であった。
【考察】 通常尿は21倍の希釈を行うが、測定系の感度は十分である。マクロファージが産生しているために多くの種類の癌で陽性になることが説明できる。また, 厳密には癌関連マーカーと呼ぶべきであるが, 癌近傍の状態を反映している可能性があり興味深い。

2.イヌリンクリアランス測定法について

1東洋紡績株式会社,2株式会社富士薬品
○木全 伸介1,安井 聖2

背景
イヌリンクリアランス(Cin)は腎機能の基本的指標である糸球体濾過値(GFR)測定のgold standardとされる。一方,本邦では内因性物質の腎クリアランス法であるクレアチニンクリアランス(Ccr)が汎用されてきた。しかし,Ccrは測定の正確性に関して,尿細管からの分泌があること,クレアチニン産生量が食事や運動などの影響を受けること,等の問題点の指摘がある。このため,Ccrは真のGFRより高値となることが報告されている。
1.開発の経緯 (社)日本腎臓学会腎機能(GFR)・尿蛋白測定小委員会の要望を受けて,腎機能検査用薬「イヌリード(R)注」と体外診断用医薬品「ダイヤカラー(R)・イヌリン」が開発され,2006年よりCinによるGFR測定が保険診療で実施することが可能となった。
2.今後の展望 近年、慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)の概念が本邦においても普及し,腎機能を正確に評価することの重要性が高まっている。今後,イヌリード(R)注,ダイヤカラー(R)・イヌリンを用いたCin測定法が,本邦における腎機能(GFR)検査の標準法として普及,定着することを期待する。

学会印象記

広島大学医学部附属病院 松原朱實

改装された松山城 近景(2007.8.11学会当日撮影)

改装された松山城 近景(2007.8.11学会当日撮影)

平成19年8月11日(土)東京第一ホテル松山にて、愛媛大学大学院医学系研究科病態解析学講座法医学分野西向弘明先生の学会長のもと盛大に開催されました。
昨年の岡山に続き、中国四国学会支部例会としては、第2回目となりました。
事務局長徳永賢治先生の開会の辞の後、支部会長宍野宏治先生の支部活動報告がありました。
一般演題8題、話題提供2題、特別講演が発表されました。
一般演題は次世代を担う大学・大学院の学生の研究の一端の発表が数多く、レベルと専門性の高い研究も数多く発表されました。
話題提供は企業から最新の話題が報告され興味を引きました。
今年2月年会総会のおいて約12年間会長の労を頂いた片山善章先生に代わり、新会長に就任された小川善資先生(北里大学大学院医療系研究科准教授)をお迎えし「当直時、異常な検査結果を報告できますか?」と題して特別講演を頂きました。
お盆にもかかわらず、60名以上の参加者で盛会裏であったのも、生物試料分析科学会の魅力と学会長の画力による賜物と思いました。

済生会広島病院 高夫智子

改装された松山城 近景(2007.8.11学会当日撮影)

改装された松山城 近景(2007.8.11学会当日撮影)

平成19年8月11日土曜日、第2回生物試料分析科学会中国四国支部学会が松山市で開催されました。定刻の13:55に学会のお世話をしていただいた学会長の愛媛大学大学院医学系研究科 西向弘明先生が開会の辞を述べられ、続いて2代目支部長の愛媛大学付属病院の宍野宏治先生が支部活動報告をされました。
参加人数は63名でお盆帰省時と重なり、参加者が少ないのではとの西向学会長の心配とは裏腹にかなりの参加者がありました。
一般演題は8題あり、岡山理科大学から『ウェルシュ菌表層のフィブロネクチン結合タンパクのプロテアーゼによる分離同定』『ウェルシュ菌が有する2種類のフィブロネクチン結合タンパクの解析』、愛媛県立医療技術大学から『爪におけるX染色体不活性化パターン-まだら模様、それとも無地?』『採血実習用血管位置検出機器の試作』、愛媛大学大学院医学系研究科から『BMTおよびCBSCT施行後の法医学的個人識別法による生着判定』、香川県立保健医療大学臨床検査学科から『プロポリスおよび成分の抗酸化作用の比較・評価』、徳島大学医学部・歯学部附属病院診療支援部から『徳島県におけるP/S比調整試料を用いたAMYサーベイの試み』、一般演題最後は学会支部長の宍野先生が『多型性LDL血症とRemL-C値との関連性について』をご発表になり、このセクションは時間通り終了しました。演題名からも分かるように、この生物試料分析科学会はハイレベルで学術的に認められた学会であります。特に若い先生方の研究発表には未来の期待を含めて素晴らしさを感じました。その後、ヤマサ醤油株式会社診断薬部診断薬基礎開発室から『尿中ジアセチルスペルミンの測定法および産生機構』についてと、東洋紡績株式会社・株式会社富士薬品から『イヌリンクリアランス測定法について』のご発表があり、話題提供にふさわしい内容でした。
16:00から特別講演として北里大学大学院医療系研究科の小川善資先生による『当直時、異常検査結果を報告できますか?』のご講演がありましたが、実例をあげての内容や先生独特のメリハリあるご講演は時間の経過を忘れる程でした。定刻通り特別講演も終了し、盛会の内に閉会の辞となりました。
引き続き17:30から幹事会が開催され、平成20年度の活動方針について話し合いを行いました。次回の開催は香川県が担当で、生物試料分析科学会の事務局長である香川県立医療大学徳永賢治先生に学会長をお願い致しました。さらに会員拡大やホームページやブログの充実についても活発な意見交換を行い方向性が決議され、18:30に全ての予定を終了し閉会となりました。
最後に、この学会がますます発展し、医療に貢献できるように願っております。ホームページ・ブログをご覧の皆様、是非次回の学会やブログの書き込みに参加してみてください。
知的な学会ですが、癒しの一面(ブログ)も体験できますよ。

徳島大学病院(検査部 主任臨床検査技師) 中尾隆之

改装された松山城 近景(2007.8.11学会当日撮影)

改装された松山城 近景(2007.8.11学会当日撮影)

日本中が真夏の暑さに包まれた平成19年8月11日、第2回生物試料分析化学会中国四国支部学会が松山市内で開催されました。学会場となった東京第一ホテル松山の最上階フロアは、松山城を南堀端方面から一望できる絶好のロケーションであり、多くの学会参加者がその絶景をカメラに収めていました。
私自身、本学会には今年度入会し、初めて参加させていただきました。お盆期間中にもかかわらず、60余名の参加があり活発な討論が行われ非常に盛会となりましたが、これもひとえに支部長の宍野先生、学会長の西向先生をはじめとする愛媛大学諸先生方のご尽力の賜物であると感じ入りました。一般演題8題、診断薬メーカーより話題提供2題、および特別講演として北里大学の小川先生のご講演という構成でしたが、初参加の率直な感想はやはり本学会の『裾野の広さ』に驚いたことであります。学会参加者は、臨床検査を生業とする先生のみならず、基礎医学、診断薬メーカーという「分析」に携わる多岐職種の先生方がおられました。普段、井の中の蛙である私におきましては、これらの先生方と接し、またご発表やご発言を聴講し、非常に多くの刺激を受けました。キャパシティの広さが最大の魅力である本学会に今後も参加し、自身の多様性を育んでいこうと思った一日でありました。

以上