第6回 生物試料分析科学会 中国四国支部学術集会

第6回 生物試料分析科学会

中国四国支部学術集会

抄 録 集

日 時:平成23年10月22日(土)13時00分~16時10分

会 場:岡山理科大学 15号館4F(階)会議室

〒700-0005 岡山市北区理大町1-1

TEL 086-256-9692

集会長:櫃本 泰雄

(岡山理科大学理学部臨床生命科学科)

〒700-0005 岡山市北区理大町1-1

TEL 086-256-9692  FAX 089-256-9559

E-mail   hitsumot@dls.ous.ac.jp

主 催:生物試料分析科学会中国四国支部

(http:/www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/bsacsb/)

後 援:社団法人 岡山臨床衛生検査技師会

目     次

Ⅰ.会場案内  ............................................ 2

Ⅱ.集会案内  ............................................ 4

Ⅲ.集会概要  ............................................ 5

Ⅳ.プログラム ............................................ 6

Ⅴ.特別講演  ............................................  8

Ⅵ.一般演題  ............................................ 10

Ⅶ.話題提供  ............................................ 14

Ⅷ.広告・協賛会社一覧  .................................. 15

会 場 案 内

理科大1

JR岡山駅西口から理大行き岡電バス(200円)が1時間に2本程度出ています。

タクシーならばJR岡山駅から15分ぐらいで1,500円程度,あるいはJR法界院駅から徒歩で15分程度(坂を上らなくてはなりません)。

車で来られる場合は,大学東口で手続きをしてもらえば校内に駐車できます。

理科大2

第6回 生物試料分析科学会中国四国支部学術集会 案内

1.受付

午後0時30分から会場にて行います。集会参加費は1,000円です。領収証は参加費と引き換えに受付でお渡しします。

2.講演スライド

平成23年8月27日(土)までにソフト受付を済ませてください。

1)一般演題,話題提供

(1) コンピュータ:Windows XP または Windows 7 を使用し,プレゼンテーションソフトは Microsoft PowerPoint 2003 以上に対応します。ただし,Microsoft PowerPoint 2007特有の機能は使用できません。

(2) ソフト(スライドデータ)は平成23年8月27日(土)までに集会長宛メールに添付して送付ください。集会終了後に責任を持って削除します。メールアドレスはhitsumot@dls.ous.ac.jpです。

(3) 講演時間:一般演題講演7分,話題提供講演10分,質疑はいずれも2分です。座長の指示に従い,時間を厳守してください。

(4) 講演抄録は生物試料分析科学会中国四国支部ホームページにリンクさせていただきますのでご了承願います。

2)特別講演

(1) コンピュータ:Windows XP または Windows 7 を使用し,プレゼンテーションソフトは Microsoft PowerPoint 2003 以上に対応します。ただし,Microsoft PowerPoint 2007特有の機能は使用できません。

(2) ソフト(スライドデータ)は平成23年8月27日(土)までに集会長宛メールに添付して送付ください。集会終了後に責任を持って削除します。メールアドレスはhitsumot@ dls.ous.ac.jpです。

(3) 講演時間:講演50分,質疑10分です。座長の指示に従い,時間を厳守してください。

(4) 講演抄録は生物試料分析科学会中国四国支部ホームページにリンクさせていただきますのでご了承願います。

3.(社)日本衛生臨床検査技師会 生涯教育点数 C10点

4.駐車場

東口で手続きをしてもらえば校内に駐車できます。

第6回 生物試料分析科学会中国四国支部学術集会 概要

時 刻          事    項             司会および座長

12:30        受付開始                                   総合司会

13:00    開会の辞(集会長 櫃本 泰雄)        事務長 西向 弘明

支部長挨拶(支部長 宍野 宏治)

13:05    一般演題 (演題番号 1 - 4)        1-2  柴田  宏

3-4 徳永 賢治

13:45    休  憩 (15分間)

14:00    一般演題 (演題番号 5 - 8)        5-6  細萱 茂実

7-8 松原 朱實

14:40    話題提供                                        高夫 智子

14:55    休  憩 (10分間)

15:05    特別講演                        櫃本 泰雄

「流路反応を利用した生体成分の検出法」

岡山理科大学理学部 基礎理学科

教授 山崎 重雄

16:05    閉会の辞(集会長 櫃本 泰雄)

会員交流会

日 時:平成23年10月22日(土)16時20分~18時00分

会 場:岡山理科大学 11号館8階ラウンジ

集会関連行事(総会/理事会)

支部理事はご出席ください。

日 時:平成23年10月22日(土)12時00分~12時45分

会 場:岡山理科大学 24号館3階小会議室(学術集会場の隣り)

世話人:櫃本 泰雄

プ ロ グ ラ ム

13:00~13:05  開会の辞   集会長 櫃本泰雄

支部長挨拶  支部長 宍野宏治

13:05~13:45  一般演題

(演題番号1-2) 座長 柴田  宏(島根大学医学部附属病院)

1.ABO血液型におけるA-weak表現型関連アリールの解析

○沖浦 達幸1),小野寺 到1),田邉 亮介 1),宍野 宏治1),西向 弘明1),福森 泰雄2)

1愛媛大学大学院病態解析学講座法医学分野,2)大阪府赤十字血液センター

2.肝機能マーカーと腹部超音波検査による脂肪肝指標との関連性について

○宍野 宏治1),高田 清式2)

1愛媛大学大学院医学系研究科,2)総合臨床研修センター

(演題番号3-4) 座長 徳永 賢治(香川県立保健医療大学)

3.ウェルシュ菌フィブロネクチン(Fn)結合タンパク質のFn Ⅲ1-C領域への結合

○萬谷 悠太1), 岡田 麻里1), 片山 誠一2), 森田 奈緒美1), 田籠 美華1), 櫃本 泰雄2)

1岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻,2)岡山理科大学臨床生命科学科

4.好中球走化性に対するヒトFibronectin(Fn)とウェルシュ菌由来Fn結合タンパク(Fbp)

の影響

○洲脇 晃平,中嶋 一秋,  森田 奈緒美, 片山 誠一,  櫃本 泰雄

岡山理科大学大学院理学研究科臨床生命科学専攻

13:45~14:00  休  憩

14:00~14:40  一般演題

(演題番号5-6) 座長 細萱 茂実(香川県立保健医療大学)

5.抗酸菌感染症入院時における血中プロカルシトニン測定の有用性

○小橋 宏明1),河田 與一2),山口 真弘3),東條 泰典3)

1株式会社ファルコバイオシステムズ 高松医療センターラボラトリー

2株式会社ファルコバイオシステムズ 岡山研究所

3独立行政法人国立病院機構高松医療センター 呼吸器科

6.エクルーシス試薬ブラームスPCTの基礎的検討

〇中村 知子,糸島 浩一,岡田  健

岡山大学病院 医療技術部

(演題番号7-8) 座長 松原 朱實(広島大学病院)

7.バーチャルスライドを用いた尿沈渣鏡検技術向上の取り組み

~取り組みから見出した現状と課題~

○松田 親史,三島 清司,小玉 牧子,柴田 宏,長井 篤

島根大学医学部附属病院検査部

8.ヘパリン加血液中のトロンビン様物質産生について

○後藤 朱里1),徳毛 悠馬1)2),矢津 優子2),川本 早織2),阪田 光彦1)2)

1広島国際大学大学院医療・福祉科学研究科,2)広島国際大学保健医療学部臨床工学科

14:40~14:55  話題提供          座長 高夫 智子(済生会広島病院)

糖尿病マーカー グリコアルブミン(GA)の臨床的意義と最近の話題

○松本 美枝

積水メディカル株式会社

14:55~15:05  休  憩

15:05~16:05  特別講演

座長 櫃本 泰雄(岡山理科大学)

「流路反応を利用した生体成分の検出法」

岡山理科大学理学部 基礎理学科   教授 山崎 重雄

16:05~16:10  閉会の辞   集会長 櫃本 泰雄(岡山理科大学)

特別講演」

流路反応を利用した生体成分の検出法

岡山理科大学理学部   山崎 重雄

化学発光分析法で、頻用されているのはルミノール化学発光法で、酸化性化合物(酸化剤)の検出に適用されてきて、多数の応用例が報告されている。ここではルテニウム錯体化学発光法による生体成分の分析例について紹介する。ルミノール法とは対称的にこのルテニウム錯体化学発光法は還元性化合物(還元剤)の検出に適用されてきている。

この話の主題は[Ru(Ⅱ)(bpy)3]2+と[Ru(Ⅲ)(bpy)3]3+の2種の錯体種である。ルテニウム(以下Ru; Ruthenium)は原子番号44で、周期表での位置は原子番号26の鉄の直下である。鉄イオンが2価と3価が存在するように同様に2価と3価が存在する。中心に位置するRuイオンを2,2′-bipyridine(以下bpy)が3枚、配位子として取りまいている。この2価錯体は極めて安定で、100℃塩酸中でも安定である。この3価錯体は酸化力があり(旧表現では還元電位1.25V、現今では酸化還元電位-1.25V)還元性サンプルと反応する。

〈I〉発光原理

[Ru(Ⅱ)(bpy)3]2+ → [Ru(Ⅲ)(bpy)3]3+ + e (酸化過程—(1)

orange               green

[Ru(Ⅲ)(bpy)3]3+ + e- (測定対象)→ [Ru(Ⅱ)(bpy)3]2+*   (励起状態)—(2)

[Ru(Ⅱ)(bpy)3]2+*  →  [Ru(Ⅱ)(bpy)3]2+hν(615 nm)     (発光)—(3)

orange

この2価錯体は安定であるが3価錯体の酸化力は比較的強く、このため溶液中では水を酸化し(特にOH)、保存寿命は冷暗所でも数時間であり、実用性に乏しかった[1,2]。この問題を実質的解決したのは日大・薬の内倉和雄であり、自作した流路電解酸化セルによりタンク内の2価錯体溶液(オレンジ色)をポンプで送液し、ついで電解セルで酸化反応(1)をさせ、3価錯体溶液(緑色)を連続供給する[7]。生成した3価錯体を数秒以内で還元性の測定対象と反応させ、励起状態の2価錯体が基底状態に緩和するときオレンジ色(615 nm)の発光する。この発光強度が還元性サンプル量と比例することで定量出来るのである。このRu錯体化学発光法の特徴は以下に記述する。

〈Ⅱ〉

II-1) 脂肪族3級アミンの検出[5,6]

3級アミンの窒素上には水素原子はなく、このため誘導化反応は理論上存在しない。従っ脂肪族3級アミンの検出にはこの方法しか存在しない。3級アミン基骨格を持つアルカロイド[8]、覚醒剤などの極めて多数の医薬品の定量に応用可能であり、報告も多数存在する。脂肪族アミンは通常可視部吸収がないので、酸性下にイオンにすればイオンクロマトグラフ法での測定は可能であるが、感度はかなり劣る。しかし[6]で指摘されているが発光強度に差が大きく、トリエチルアミンとトリヘキシルアミンでは4倍の開きある。また芳香族環や吸電子基の存在+で発光強度は大きく減少する。発光強度は3級アミン>2級アミン>1級アミンであるので1級あるいは2級アミンを流路反応で3級に誘導すれば高感度検出が可能である[9]。

Ⅱ-2) シュウ酸とその類縁化合物

研究の初期から1,2-ジカルボニル基を持つシュウ酸が強く発光することが報告されていた[3]。流路電解セルの開発に伴い尿中のシュウ酸の定量に応用された[7]。その後ピルビン酸、1,3-ジカルボニル基を持つマロン酸やシアノ基などの電子吸引基を持つ化合物郡にも試料としての可能性が拡大されてきた[10]。シュウ酸の発光強度が大きいので、糖、エチレングリコール、ヒドロキシカルボン酸、α、β、γアミノ酸を流路反応でシュウ酸に誘導して高感度検出する方法も報告された[11]。

〈Ⅲ〉実際的側面

Ⅲ-1) [Ru(Ⅱ)(bpy)3]Cl2・6H2Oは自製可能(第4版実験化学講座17巻、丸善)であるが、Aldrichから入手出来る。5gで35000円程度であるが標準的試薬濃度が0.2mMであることを考慮すると1Lで1000円、1日で250円である。また廃液からの回収も可能であり、飽和食塩水に難溶である。精製法として少量のEtOHに溶解し、数滴の水(結晶水用)を加え、5倍体積のジオキサンを少量づつ加えると高純度結晶が得られる。過塩素酸塩としての回収は容易であるが爆発性のため推奨出来ない。

Ⅲ-2) 測定対象をシュウ酸、ピルビン酸、アセチル酢酸など酸素系還元剤とするさいはpH2~4のリン酸、酢酸緩衝剤を、3級アミン系などを対象とする際はpH8~9のホウ酸、リン酸系緩衝剤を、指示電解質は硫酸系が推奨される。

Ⅲ-3) 電解セルは[7]に自作方法が記載されているが、北斗電工から十万程度購入可能である。直流数V,100μの電源には通常のポーラログラフィーが転用可能であり、北斗電工から専用電源を十万円程度で購入出来る。

文献

[1]D.M. Hercules, F.E. Lytle, J. Am. Chem. Soc., 88(1966)4745.

[2]F.E. Lytle, D.M. Hercules, Photochem. Photobio., 13(1971)123.

[3]W.K. Nonidez, D.E, Leyden, Anal. Chim. Acta, 96(1978)401.

[4]木村 優,西田鈴子,化学教育, 33(1985)72. Chem. Abst., 103(1985)1691118a.

[5]J.B. Noffsinger, N.D. Danielson, Anal. Chem., 59(1987)865.

[6]J.B. Noffsinger, N.D. Danielson, J. Chromatogr., 387(1987)520.

[7]内倉和雄,分析化学39(1990)323.

[8]H. Kodamatani, K. Saito, N. Nina, S. Yamazaki, Y. Tanaka, J. Chromatogra., A1100(2005)26.  [9]N. Nina, H. Kodamatani, K. Uozumi, Y. Kokufu, K. Saito, S.Yamazaki, Anal. Sci., 21(2005)497.  [10]K. Saito, S. Murakami, S. Yamazaki, A. Muromatsu, S. Hirano, T. Takahashi, K. Yokota,T. Nojiri,  Anal. Chim. Acta, 378(1999)43.

[11]S. Yamazaki, S. Hara, K. Yokota, T. Ikegami, D. Konari, K. Saito, J. High. Resol. Chromatogr., 23(2000) 127.

「一般演題」

1.ABO血液型におけるA-weak表現型関連アリールの解析

○沖浦 達幸1),小野寺 到1),田邉 亮介 1),宍野 宏治1),西向 弘明1),福森 泰雄2)

1愛媛大学大学院病態解析学講座法医学分野,2)大阪府赤十字血液センター

【目的】 ABO血液型にはA101,A102,B101,O01およびO02の主要な5種類のアリールがあり,それらの頻度は世界の集団間に差が見られる。そして今日では稀な変異型に関係するアリールの解析が進められている。今回,我々は日本人から検出したA型変異表現型のうち,A-weak表現型(A抗原量が非常に低いタイプ)に関連するアリールの解析を行った。

【方法】 試料は血清学的方法でA-weak表現型をもつと判定された日本人のDNAを使用した。ABO遺伝子のエクソン6および7の塩基を,PCRダイレクト・シークェンシングを行い解析した。

【結果とまとめ】 DNA塩基配列を解析したところ,15種類のA-weak表現型関連アリールが検出され,2つのグループに分類できた。グループ1は,基本配列はA101またはA102と同様であるが467番より下流に塩基変異が1ヶ所あるもの(12種類),グループ2は,646番塩基はAで,それより下流に塩基変異が1ヶ所または3ヶ所あるもの(3種類)であった。グループ2はすべてAel表現型関連アリールであり,検出数はA-weak全検体数のほとんど(90%)を占めていた。

2.肝機能マーカーと腹部超音波検査による脂肪肝指標との関連性について

○宍野 宏治1),高田 清式2)

1愛媛大学大学院医学系研究科,2)総合臨床研修センター

【目的】 脂肪肝は肝臓に過剰な中性脂肪が蓄積した状態であり,肥満や糖尿病、高脂血症などのメタボリックシンドロームあるいは飲酒により生じるとされている。そこで肝機能マーカーと腹部超音波検査による脂肪肝指標との関連性について調べた。

【対象および方法】 対象は当院の外来および入院加療中のアルコール性脂肪肝患者,非アルコール性脂肪肝患者とした。肝機能マーカーは日常検査法で測定した。

【結果】 AST,ALT,AST/ALT比,r-GTP,Lp(a),アポC2,C3,Eおよび血清Ⅳ型コラーゲンはいずれも脂肪肝患者で健常者よりも高値を示した。一方,アルブミンは健常者よりも低値を示した。

【考察および結論】 非アルコール性脂肪肝患者の血清Ⅳ型コラーゲン値およびアポリポ蛋白C-3値の測定は非アルコール性脂肪肝を簡易に推定できるマーカーの一つになり得ると考えられた。

3.ウェルシュ菌フィブロネクチン(Fn)結合タンパク質の

Fn 1-C領域への結合

○萬谷 悠太1), 岡田 麻里1), 片山 誠一2), 森田 奈緒美1), 田籠 美華1), 櫃本 泰雄2)

1岡山理科大学大学院臨床生命科学専攻,2)岡山理科大学臨床生命科学科

【目的】 フィブロネクチン(Fn)は,血漿中や結合組織に存在する糖タンパク質で,多くの病原細菌がFn結合タンパク質(Fbp)を持つことが知られている。ガス壊疽や食中毒,抗菌剤関連下痢症などを引き起こすウェルシュ菌にも2つのFbp(FbpA, FbpB)が存在する。これらのFbpがFnのどの領域に結合するのか明らかにしたので報告する。

【方法】 Fn分子の一部をマイクロタイタープレートに固定化し,ビオチン化recombinant FbpA(rFbpA)またはビオチン化rFbpBを結合させ,ストレプトアビジン-HRPを用いた ELISA法でrFbpの結合能を調べた。次に各rFbpのHisタグ部分をFactor Xaプロテアーゼで切断し,リガンドブロット法を行ってHisタグ領域にFn結合活性があるかどうか調べた。

【結果と考察】 ELISAの結果,Fn Ⅲ1-C領域にウェルシュ菌のrFbpが結合することが明らかとなった。さらにリガンドブロット法によりrFbpはHisタグ領域がなくてもFn Ⅲ1-C領域と結合することが明らかになった。最近,Fnのtype Ⅲモジュールに結合するFbpを持つ細菌がいくつか報告されたが,Ⅲ1-C領域特異的に結合するFbpは,ウェルシュ菌で初めて認められた。

4.好中球走化性に対するヒトFibronectin(Fn)と

ウェルシュ菌由来Fn結合タンパク(Fbp)の影響

○洲脇 晃平,  中嶋 一秋,  森田 奈緒美, 片山 誠一,  櫃本 泰雄

岡山理科大学大学院理学研究科臨床生命科学専攻

【目的】 我々はこれまで,ウェルシュ菌由来の2種類のFibronectin(Fn)結合タンパク(FbpAおよびFbpB)の性質を調べて来た。今回,アガロース平板法を用いて,Fn及び Fbpの好中球遊走能への影響を調べた。

【方法】 プラスチックシャーレ(Nunc)にBSA,Fn,rFbpA,rFbpBをそれぞれ吸着させ,その上にアガロースゲルを作製した。ゲルパンチャーにより3 mm間隔にφ=3 mmのWellを2つ開け,それらに好中球浮遊液(1×106 個/10 μl)および走化性因子f-MLP(10 nM)10μlを 注入した。このシャーレを5%CO2,37℃で90 分間インキュベートし,マイクロメーターで好中球遊走距離を測定した。

【結果と考察】 BSAを吸着した場合に比べ,Fnを吸着したシャーレ上での好中球遊走距離は増加した。一方,rFbpA,rFbpBを吸着した場合,遊走距離は減少した。In vivoで損傷を受けた組織では,血漿由来のFnが吸着することにより好中球遊走が促進されることが示唆された。また,ウェルシュ菌による創傷感染では,組織に吸着したウェルシュ菌由来Fbpが好中球遊走を抑制している可能性が示された。

5. 抗酸菌感染症入院時における血中プロカルシトニン測定の有用性

○小橋 宏明1),河田 與一2),山口 真弘3),東條 泰典3)

1株式会社ファルコバイオシステムズ 高松医療センターラボラトリー

2株式会社ファルコバイオシステムズ 岡山研究所

3独立行政法人国立病院機構高松医療センター 呼吸器科

【目的】 プロカルシトニン(以下PCT)は,細菌感染症で血中濃度が上昇することから細菌性敗血症のマーカーとして注目されている。今回抗酸菌感染症入院患者におけるPCT測定の有用性の検討を行ったので報告する。

【方法と結果】 1)抗酸菌感染患者入院時にスクリーニングとしてPCTの依頼があった39例を対象に検討した。PCTの平均値は0.123ng/mLであり,PCT高値であったのは急性胆管炎の併発,粟粒結核であった。

2)PCTによるスクリーニング対象者の内,入院中不明熱の鑑別目的で測定した症例を検討した。

症例1:入院時のPCTは0.09ng/mLで,9日後に発熱によりPCTを測定したが0.09ng/mlと変化なしであった。KL-6が高値であり,薬剤熱と判断された。

症例2:入院時のPCTは0.03ng/mlで6日後に発熱,CRP上昇のためPCTを測定したが0.06ng/mlと低値であり,活動性のB型肝炎,気管支炎によるものと考えられた。

【考察】 抗酸菌感染症入院時スクリーニングでPCT測定値が高値の時,重複感染や粟粒結核の鑑別に有効であった。これらの症例のように入院時スクリーニングをすることによって,その患者様の入院時ベース値から上昇したかどうかで,入院中に発熱した時の薬剤性熱,不明熱と細菌感染による発熱の鑑別に有効であった。

6.エクルーシス試薬ブラームスPCTの基礎的検討

〇中村 知子,糸島 浩一,岡田  健

岡山大学病院 医療技術部

【目的】 近年,PCTは細菌性敗血症の鑑別診断および重症度判定に有用なマーカーとして注目されている。今回,電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を原理としたエクルーシス試薬ブラームスPCTを用い基礎的検討を行ったので報告する。

【方法】 対象:当院PCT検査依頼のあった,外来および入院患者検体

測定機器:モジュラーアナリティクス〈EE〉

試薬:エクルーシス試薬ブラームスPCT(Roche Diagnostics)

上記を用いて,基礎的検討を行った。

【結果・考察】 基礎的検討結果において,同時および日差再現性,相関性,希釈直線性について良好な結果が得られた。共存物質の影響については溶血ヘモグロビンに対して負の影響が認められた。また,PCT測定値のカットオフを0.5ng/mlとしたとき,PCTの陽性率はGNRで94.1%,GPCで66.7%,GPRで50%だった。血液培養の結果が判定するのには時間がかかり,抗生物質の影響により菌が検出できなかったり,コンタミネーションにより疑陽性になったりする。PCTは30分ほどで測定で,敗血症により迅速な対処および治療を必要とする臨床において,敗血症の鑑別診断の指標の一つとして有効であると考えられる。(連絡先:086-235-7667)

7.バーチャルスライドを用いた尿沈渣鏡検技術向上の取り組み

~取り組みから見出した現状と課題~

○松田 親史,三島 清司,小玉 牧子,柴田 宏,長井 篤

島根大学医学部附属病院検査部

【目的】 演者らは尿沈渣鏡検技術向上および技師間差是正を目的として顕微鏡環境を再現する性能を備えたバーチャルスライドの検討を行い,目的に対して有用なツールになると結論づけた。今回その取り組みの中で,技師間差の現状と課題を見出すことが出来たので報告する。

【対象と方法】 島根県内の24施設を対象とした。バーチャルスライド画像ファイルと閲覧ソフト(オリンパス社)を配布し,2症例を設問としたサーベイを実施した。

【結果】 症例サーベイの正解率は,各々 75.0%であった。従来から行われている他の出題手法と比較したところ,これらの手法では同じ内容を問う設問であったが正解率が82.4%~97.1%であり,バーチャルスライドを用いたサーベイは他の手法よりも正解率が低い結果となった。

【考察】 H22年度日本臨床衛生検査技師会精度管理調査での島根県の正解率は92.5%と高い正解率であるが,バーチャルスライドを用いたサーベイでは,正解率が75%という結果であった。このことから,標本全体からキーとなる成分を見つけ出し,病態を導き出す能力が不足していることが考えられ,この点を向上させることが技師間差是正に対する今後の課題であると考えた。

8.ヘパリン加血液中のトロンビン様物質産生について

○後藤 朱里1),徳毛 悠馬1)2),矢津 優子2),川本 早織2),阪田 光彦1)2)

1広島国際大学大学院医療・福祉科学研究科,2)広島国際大学保健医療学部臨床工学科

【目的】 治療のための体外循環時,回路内での血液凝固を抑制するためにヘパリンなどの抗凝固剤が使用されているにもかかわらず回路内血液凝固が発生する場合がある。この原因として血小板や補体,接着因子の関与が考えられている。今回,この回路内血液凝固の原因の一つが,体外循環回路材料へのトロンビン様物質の吸着による血液凝固能亢進であることを示す。

【方法】 体外循環回路材料による凝固因子活性化の指標として,各種材料の試験管での全血凝固時間と,管壁に残存したトロンビン様活性値を測定した。トロンビン様活性は試験管にヘパリン加血液を入れ37℃に60分間付置し,生食にて洗浄後,管壁に残存したトロンビン様活性を合成基質S-2238を用いて測定した。

【結果】 抗凝固剤にヘパリンを用いたにもかかわらず,試験管にはトロンビン様活性が観察された。全血凝固時間が短い材料ほど残存するトロンビン様活性が高かった。抗凝固剤にEDTAやクエン酸ナトリウムを使用した場合はトロンビン様活性の発現は観察されなかった。

【考察】 ヘパリン加血液で凝固系が活性化され生じたトロンビンはヘパリンに結合しアンチトロンビン(AT)と複合体を形成しその活性を失う。しかし吸着しやすい材料があるとトロンビンは活性基を残したまま材料に吸着しATの阻害を受けないと考えられる。

「話題提供」

糖尿病マーカー グリコアルブミン(GA)の臨床的意義と最近の話題

○松本 美枝

積水メディカル株式会社

最近,糖尿病は日本人の国民病と言われるくらい該当者が多く,しかも年々増加傾向にあります。2007(平成19)年の国民健康・栄養調査結果では糖尿病が強く疑われる人は890万人,糖尿病の可能性が否定できない人は1320万人でその合計は2210万人にもなり,前年の調査結果より340万人も増加しています。年々増え続ける医療費は大きな社会問題となっていますが,糖尿病はその大きな要因のひとつと言えます。

現在,血糖コントロールは,血糖値以外にヘモグロビンA1c(HbA1c),グリコアルブミンなどが主な指標とされています。

グリコアルブミン(以下GA)は,HbA1cに比べて血糖コントロールの変動を早く反映する,透析患者でも影響を受けないなどの特徴があります。また2009年3月より初めての糖尿病関連検査として,献血に導入されました。

今回は,最近の話題として,1)糖尿病妊婦の血糖モニタリングにおけるGAの有用性,2)献血事業でのGA実施状況などについてご紹介いたします。

協賛および広告会社一覧

会 社 名           広   告         連 絡 先

アボットジャパン㈱        “A Promise for Life”

〒541-0051  大阪市中央区備後町1-1-6

TEL:06-6228-8630

FAX:06-6203-5805

㈱エイアンドティー      医療を支える理想のシステムへ

〒730-0029  広島県広島市中区三川町7-7

三川町パーキングビル11F

TEL:082-545-1336 FAX:082-246-8885

㈱シノテスト         医療の発展に貢献する事で社会に貢献します

〒730-0013 広島市中区八丁堀15-10  セントラルビル9F

TEL:082-511-2151

FAX:082-511-2150

篠原化学薬品㈱     健康サポート業として頑張っています

〒780-0084    高知市南御座9-41

医療,研究,介護用品の事ならおまかせ下さい

TEL:088-882-5000

FAX:088-882-5152

はじめ科学㈱          技術に活きる奉仕のはじめ

〒791-8018  松山市問屋町3-7

TEL:089-922-2151

FAX:089-922-2155

㈱日立ハイテクノロジーズ      最先端を,最前線へ

〒105-8717   東京都港区西新橋1-24-14

TEL:03-3504-5835

FAX:03-3504-7756

(五十音順)

生物試料分析科学会中国四国支部理事名簿

支 部 長  宍野 宏治  (愛媛大学大学院医学系研究科)

事 務 長  西向 弘明  (愛媛大学大学院医学系研究科)

会  計  松原 朱實  (広島大学病院)

理  事  柴田  宏  (島根大学医学部附属病院)

理  事  徳永 賢治  (香川県立保健医療大学)

理  事  櫃本 泰雄  (岡山理科大学)

理  事  中尾 隆之  (徳島大学病院)

理  事  古川 雅規  (岡山大学病院)

理  事  高夫 智子  (済生会広島病院)

理  事  細萱 茂実  (香川県立保健医療大学)

理  事  沖浦 達幸  (愛媛大学大学院医学系研究科)

理  事  梶川 達志  (香川大学医学部附属病院)

理  事  阪田 光彦  (広島国際大学大学院)

理  事  糸島 浩一  (岡山大学病院)

理  事  川元 博之  (下関市立中央病院)

(順不同,敬称略)

第6回生物試料分析科学会

中国四国支部学術集会 抄録集

2011年9月1日発行

発 行 人:生物試料分析科学会中国四国支部

編 集 人:集会長 櫃本 泰雄

支部事務局:愛媛大学大学院医学系研究科

病態解析学講座法医学分野内

支部長 宍野 宏治

事務長 西向 弘明

〒791-0295 愛媛県東温市志津川

TEL 089-960-5291(直通)

FAX 089-960-5293(直通)

E-mail abs-ehm@m.ehime-u.ac.jp

印   刷:不二印刷

TEL 089-973-1266